38【勝木】推理

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「思い出して頂けましたか!いやぁ、本当にお久しぶりですね!かれこれ、六年ぶりですよね!」 勝木先輩は、笑顔のままで答えた。 「…うん?」 と、港警部が呟いた。 「勝木明美さん…六年ぶり……」 そして… 「ああっ! …と、言う事は…ま、まさか、君は、あの事件の…」 と、更にうめき声を漏らした。 「そうです」 と、勝木先輩は港警部に向かって言った。 「僕は… 六年前の五月八日に『焼肉屋とら丸』の近くで刺殺された女子大生、勝木明美の弟です」 「えーっ!!!」 と!今度は! 進也とユイさんの二人が思わず、大声をあげた。 進也の頭の中は… あまりの驚きで、カナリのパニック状態になっていた。 か、勝木先輩が… 六年前の五月八日に 『焼肉屋とら丸』の近くで殺された女子大生の 弟さんだってっ?!!! ユイさんの方も、 両目を大きく見開いて、驚きのあまり言葉を失っている様子だ。 「進也もユイさんも… 二人とも、黙っててごめん」 と、勝木先輩が二人にも頭を下げた。 そして、 「何となく、言い出しずらくなっちゃってさ」 と、ちょっと笑いながら頭をかいた。 「いや…。それにしても」 と、倉木青年が口を開いた。 「立派になったなぁ。 もう、大学生か。ごめん。言われるまで気付かなかったよ」 「いえいえ。立派になっただなんて、それほどでも…」 と、勝木先輩は少し照れ臭そうに頭をかいた後、 「さて!皆さん! この倉木さんは、僕の姉が高校の空手部のマネージャーをしていた時の元部員の方であり、高校を卒業した後も姉と仲良くしてくれていた方なんです」 と、改めて一同に説明をした。 今度は、倉木青年の方が照れ臭そうに頭をかいていた。 「なので…」 と、勝木先輩は急に目を伏せると 「姉が六年前に殺された時も悲しんでくれました…」 と、静かに言葉を続けた。
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