121人が本棚に入れています
本棚に追加
「ところで…」
と、勝木先輩は更に言葉を続けた。
「この一連の事件の発端となった六年前の事件だけに関しては、
ネット上に『ある噂』が流れました。
それは、
六年前の五月八日に刺殺された女子大生…つまり、僕の姉は生前、ある男子大学生からストーキング行為を受けていた。
それで、それに悩んだ姉が警察にその事を相談したのだが、
その相手のストーカーの男子大学生というが、警察に影響力が有る市会議員の息子だった為、警察は父親議員からの圧力を恐れて、
そのストーカーを逮捕できずにいた。
そして、その結果、僕の姉はストーカーの男子大学生に刺殺されてしまった。
それで、その事に腹を立てた姉の友人か知人が、
姉が殺されたその次の日の晩…つまりは、六年前の五月九日にそのストーカーの男子大学生を刺殺して姉のカタキをとった…
というのが、その『噂』です。
まあ、この噂のどこまでが、果して真実なのかは僕にも分かりません。
ただ、実際に姉は生前、ある人物からのストーカー行為に悩んでいて、僕もその事について相談を受けた事が有ります。
当時、中学生だった僕には、何もしてやれませんでしたが…。
ちなみに、その男子大学生が殺された五月九日の晩…
その日は、姉…勝木明美が殺された次の日の晩で、僕ら家族は、すぐにでも姉の葬儀を執り行いたかったのですが、
姉の遺体は司法解剖に回されてしまい、
五月九日の晩は僕ら家族全員、家で一晩中、悲しみに暮れていました。
ですから、僕の家族には、全員ちゃんとしたアリバイが有ります。
男子大学生を殺害したのは、僕ら家族ではありません」
と…
ここで勝木先輩は、
一度、言葉を切ると、少し目を伏せた。
が、
すぐに顔を上げると、再び話をしだした。
最初のコメントを投稿しよう!