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「ここで、注目すべき点は、犯人が、犯行と犯行の間に『三年』という期間を設けている事です。
それは、一体、どういった理由からだと思いますか?」
「それは…」
と、今度はユイさんが口を開いた。
「いくら何でも、毎年とか一年おきとか短い期間で同じ日付、同じ場所で殺人を繰り返したりしたら…
さすがに、犯人が同一人物である事をすぐに警察に気付かれてしまって、
自分が逮捕されるリスクが増えるからじゃないですか?」
「その通りです」
と、勝木先輩は言葉を続けた。
「この犯人は、警察に『自分は六年前の事件の関係者だ』というメッセージを伝えるにしても、
すぐにばれてしまうような、分かりやすいやり方で自分が逮捕されるという事だけは避けようとしているようです。
それで、間に三年という長い期間を間に設けて、事件の全体像をぼかしているのでしょう。
いわゆる捜査の撹乱(かくらん)って、ヤツです」
と、ここで勝木先輩は言葉を切ると、
「しかし、
なぜ『三年』なのでしょうか。『二年』とか『四年』とかではなく…」
と、続けた。
「それは…
二年なら短すぎるし、
四年なら長すぎる、とかですかね…」
進也が呟いた。
「うん。それも有るだろうね。
二年ごとなら、カンの良い人間なら、すぐに規則性に気付いてしまうかもしれないし、
かと言って、四年ごとなら、期間が長すぎてメッセージとして成り立たないと犯人は考えたのかもしれません。
三年間という期間は、捜査の撹乱という点においては、ちょうど良い長さと言っても良いのかもしれません」
と、ここで勝木先輩は、自分の鼻先にずり下がった銀縁眼鏡を指で押し上げて、言葉を続けた。
「しかし、ですね。
その反面、三年という期間が過ぎるまで、次の犯行を待ち続けるというのは、実際に犯行を行う犯人にとっては相当の長期間です。
この三年という期間は、
犯人にとって、
何か『他に意味』が有るんではないでしょうか。
もしくは、三年という期間を設定するにあたって、何か、きっかけとなる出来事が有ったとか…」
「きっかけ、だって?」
と、倉木青年が口を挟んだ。
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