38【勝木】推理

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「その父親議員は、 男子大学生が殺害された後も引き続き議員職を続投し、 残り三年間の議員任期が満了した後、再び選挙に立候補するのですが、 その時の選挙活動の資金の流れ等から、以前から暴力団関係者と癒着(ゆちゃく)していた事が発覚してしまい… 警察に逮捕され、その後の議員生命を完全に断たれる事となります」 と、そこで勝木先輩は 一度、言葉を切ると再び話し始めた。 「これは、 あくまで、僕個人の一推測なのですが… その父親議員は、 自分の息子を殺された直後、癒着していた暴力団関係者に依頼して、水面下でその犯人探しを個人的にやっていたという可能性は無いでしょうか。 警察だけには、任せておけないとばかりに。 もちろん、暴力団関係者が人を探すという事は… その犯人探しの方法は、極めて非合法的…言い換えると、 何でもアリの非常に荒っぽいやり方だったのではないでしょうか。 そこで、 『次の犯行を一体、いつにしようか』と考えていた犯人は、 下手に動けなくなってしまった。 もし、自分が暴力団関係者に見付かってしまったりしたら…一体、何をされるか、分かったものではありません。 そこで、 犯人は、何もせずに息を潜めて、次の犯行の機会が訪れるのをずっと待ち続けていた…。 そして、それから三年後に、父親議員と暴力団関係者の両方が警察に逮捕され、 その時になってはじめて、犯人にとっては、とても動きやすい状況になったのです。 恐らく、犯人は警察の捜査の裏をかく事に関しては、自信が有ったのでしょう。 そして、 早速、犯人は、次の犯行に及んだ…。 それが、今から三年前に起こった殺人事件。 言い換えるなら、男子大学生を殺害してから三年後に起こった殺人事件と言う訳です」 と… そこで進也は、 隣に座っているユイさんが、 両手を『ぎゅっ』と固く握りしめた事に気が付いた。 今、勝木先輩が言った 『今から三年前に起こった事件』というのが、 ユイさんのお兄さんが殺された事件という事になる訳だから、 たぶん、彼女はその事を改めて思い出して『ぐっ』と悲しみをこらえているのであろう…。
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