0人が本棚に入れています
本棚に追加
VIII
授業が終わった後、ダレクの部屋に集まることが3人の日課になっていた。
同期が自分達だけしかいないからか、3人はすぐに打ち解け、寝るとき以外の時間のほとんどを一緒に過ごしている。友人というよりも、家族に近いかも知れない。ふとジェスは思った。
部屋にある参考書を大量に持ち出し、頭を捻りながら羊皮紙に文字を綴る。3人とも文字がかけるから良かったもの、これで文字まで書けなかったらと思うとぞっとした。参考書が読めなければこの毎日山のようにだされる膨大な宿題に対処できなかっただろう。
「あのシャークとかいう糞教授。宿題多すぎんだろ。」
悪態をつきながら、読みかけの本を部屋に放り投げる。
ダレクが慌てて杖を振ると本が浮かび上がり、本棚の元の位置にもどった。
「確かにこれは・・・、僕でもつらい。」
ダレクがため息をつくのを見て、レナが意外だと呟いた。
「だってシャーク教授の授業つまんないんだもん。一般教養だからかもしれないけど、座学だけじゃ眠くもなるよ。」
「それに比べてウェルナー先生の授業は、実技が多くて楽しいね。」
「説明はちょっと難しいけどな。」
「何を言っているんだ。わからないのは、ジェスが馬鹿なだけだよ。」
「言ったなぁ。こんにゃろう。」
ダレクに挑発され背後から首を絞める。
村にいた友人とのやりとりのようで、ちょっとホームシックになった。
目頭に浮かぶ涙をこらえ、今日の授業のことを思い出すことにジェスは勤めた。
午前はウェルナー先生の呪文学とエイミー教授の考古学。午後の授業はシャーク教授の一般教養とチャールズ教授の魔法体術の授業だった。その中で宿題が一番少なかったのはウェルナー教授だった。もちろん一番多かったのはシャーク教授の宗教戦争についての論文、羊皮紙5メートル。
「そういえば、あの時レナは何をしていたんだ。」
次第に長くなっていく羊皮紙を見るのが嫌になり、レナに話しかけた。
最初は可愛いと思っていたが、だんだんと妹のように思えてくる。快活で明るいが商人の子だからか、ちょっと計算高い所が玉に瑕だ。こんな風に女性を客観的に見られるのは、今までに無いことだった。一緒に過ごした女性が母親だけだったからかもしれない。
不思議といえば最近はダレクをからかうのが非常に楽しいということだ。
最初のコメントを投稿しよう!