VIII

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 この温和そうな少年は、頭が良いのに普段はおどおどしている。しかし魔法を使うときだけは別だ。あの真剣な表情は男らしくかっこいいと思う。  「あの時って、シャーク教授の部屋を覗いた時のこと?」  「あれのせいで目をつけられたんじゃないか。」  「私は偶然部屋があいてたから、道を聞こうとしただけよ。ふう・・・。なん・・目的・・・は手に入れた。って言ってたような気がするけど。」  「目的、手に入れた?」  「何を手に入れたんだろう。古大樹が怒ったのと関係あるのかな。」  「どうしてそうなるんだよ。」  「だって他の教授は避難誘導や大樹に対応していたのに、部屋でこそこそしてるなんて変だ。」  「言われてみれば、確かにそうだわ。」  「それなら調べてみるか。シャーク教授の部屋にこっそり忍び込むんだ。」  我ながらいい思い付きだとジェスは思った。あの忌々しい教授に一泡吹かせてやりたいのは皆同じだろう。きっと賛同が得られるに違いないと思っていたが、二人の反応は違っていた。  「ジェスは宿題がやりたくないだけじゃないのかな。」  「それもある。それもあるが、それだけじゃ無い。先輩達だってあの教授に嫌がらせを受けているだろ。これは仁義のある戦いなのだ。」  「教授の部屋にどうやって入るつもりよ。前は偶然扉が開いてたから入れたのよ。」  「俺達は魔法使いだろ。魔法でカギをあけたりできるだろう。」  視線をダレクに向けると露骨に嫌そうな顔をされた。  適当に言ってみただけだが、やはりそういう魔法はあるようだ。  「あるんだ・・・。う~ん。私もやってみようかな。」  「レナまでそんなこと。危ないって」  「それなら、念入りに計画をたてましょう。」  レナが同意したことでダレクも宿題を解くのをあきらめたようだ。ペンを置き、羊皮紙を丸め、部屋の隅にある本棚から必要そうな魔法書を見繕い取り出していく。  「扉を魔法で解除して、何か怪しそうなものを探す魔法とかも欲しいわね。教授が授業中に忍び込めばいいかしら。」  「”探知”の魔法だね。塔を掃除をしている使用人もいるから、その人たちの目に映らないように透明化の魔法も覚えていこう。”透明化”は青色の魔法、”探知”は黄色の魔法だ。」  「赤は何か無いのか。」  「ジェスはもし見つかったときに、シャーク教授の注意を逸らすための魔法を覚えて欲しい。」
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