VI

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VI

 6層に戻ったダレクを、数人の6年の先輩達が迎えた。  少年の腕に蝋燭の入った箱があるのを見るとほっと胸を撫で下ろす。  「先輩もってきました。」  「でかした。これで卒業ができる。」  嬉しそうな先輩達を見て、胸の中に何かがわきあがる。もやもやした感情を飲み込み、ダレクは気になることを尋ねてみた。  「何でシャーク教授はウェルナー教授のことをきらっているんですか。」  ダレクの質問に先輩の一人が声を落として答える。  「ウェルナー先生は伝説の魔法、黒魔法の継承者なんだ。」  「黒魔法?」  「精霊とマナの関係については知っているか。精霊は基本的には赤、青、黄色のそれぞれのマナを食らう。だけどな。中には複数のマナを複合した人工的な色のマナしか食わない精霊がいるのさ。」  色分の儀の際にヘヴィングが黄色のマナを持っていると言っていたことを思い出す。それなのにもかかわらず、彼は黄色では無く、橙色のローブをつけていた。  「複数の色を複合した人工的な色のマナ・・・。そういえばヘヴィング様は橙色のローブを着ていました。」  「よく気がついたな。ヘヴィング様は赤と黄色のマナを操れる。ウェルナー教授は黒。つまり赤、青、黄色の全てを使えるんだ。」  「つまりウェルナー教授は4種類の魔法を使えるのですか。」  「いや、恐ろしいことに7種類の魔法だな。赤、黄、青の3原色に加え橙、緑、紫の複合魔法。そして黒の古代魔法。うちのシャーク教授が妬むのもわかるわ。どうやったら、そんなすごい精霊に好かれるんだろうな。」  「それよりも、黒の精霊といものが想像できません。いったい、どんな精霊なんでしょうか。」  ダレクの純粋な疑問に、何故か先輩たちは笑い出した。  「竜に決まっているだろ。」  「竜?」  「まあ誰もウェルナー教授の精霊を見たことが無いんだけどな。宗教戦争や英雄詩を読めばそうだろうってことがわかる。これから6年間勉強に励むことだな。もしかしたらそのうち見せてもらえるかもしれないぞ。」  話は終わりとばかり蝋燭の入った箱を抱えた先輩達が、談話室から自室へ戻っていく。  竜というのは父と母が話していた物語の中だけの生物だと思っていた。  精霊や魔法はあるのに、何故かそんな存在がいるとは思えなかったのだ。数十メートルはある体躯。巨大な体を空に浮かせる翼。その息は人を一瞬で灰にする。
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