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一章 三人組
3人の関係が始まったのは、高校が入ってすぐのことだ。
始めに声をかけてくれたのは、大柄で威圧感のある井上大吾という青年で、なんでも柔道の新入部員が足りないから一緒に入って欲しいというものだった。
特にしたいことがあったわけじゃないが、体育以外で汗だくになってまで練習に励むという事を嫌った僕は丁寧に断りをいれた。いれたはずなのだが、高校生活が始まって一カ月、ことあるごとに部に勧誘され続けている。
授業からようやく解放され、雑談にふける生徒達で教室は賑わっていた、
一か月もたつとクラスにもようやく輪が出来始める。幸いにも、どの輪にも所属しないクラスメイトはいないようで、どの生徒にとってもまあまあ好調な高校生活が始まったともいえた。
「昌平はいるか。」
教室のドアが開き、学生服では無く柔道着を着た大柄な男がドカドカと中に入ってくる。
僕より頭一つ分高い背丈、肩幅に至っては倍くらいあるんじゃないだろうか。これで自分と同じ高校一年だというのだからちょっとおかしい。
教室に居残って雑談していたクラスメイト達が、何事かと一瞬ドアを見たが騒動の発端が大吾とわかるといつもの事だとまた雑談にもどっていく。
「今日は柔道部の見学に来てくれると、約束したではないか。」
そう言って大吾がドンッと、座って委員会の仕事をこなしている僕の机を叩いた。その拍子に、束ねていたプリントが床に飛び散ってしまう。
「あのな大吾、別にすっぽかしたわけじゃないんだ。ただ物事には優先順位があってだな。」
「うるせえ、俺との約束より大事なことなんてあるか。」
「んな、滅茶苦茶な。」
大吾の横暴なもの言いに、僕は頭を抱えてしまう。僕だって、委員会の仕事をするくらいなら見学に行く方が楽しいのに。
「おら、行くぞ。」
有無を言わさず右手をひっぱられ、前のめりになった僕の左手を同じくらいの力で誰かが掴んだ。
「ごめん、助かった。」
誰が助けてくれたのだろうか。態勢を整えながら、僕は掴まれた左手の先を見た。
視線の先にはもう一人の友人で大吾の幼馴染の愛城梨花がいた。
柔道部の大吾と同じ力でひっぱれるなんてすごいとしか言いようがないが、見た目は可憐なお嬢様でとてもそんな力があるようには見えない。実際どこかの会社のご令嬢だと聞いたことがあるが、本人は詳しく話したことは無かった。
「昌平君がいやがってるでしょ、この脳筋ゴリラ。」
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