Ⅱ-Ⅱ

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 3人の見習いの適正を調べるために”色分の儀”を行った大広間に、7人の魔法使いが集まっていた。”色分の儀”では覆水盤と呼ばれる魔法が置かれていたが、今は片付けられ円卓が置かれている。その円卓を囲むように座った教授達が、聖騎士団長アーノルドのもたらした知らせを吟味していた。  対魔派のグレイブ男爵が親魔派のレナード男爵に戦線を布告した。  仲が悪いということはアレックスからも話を聞いていたが、ここまで緊迫した状況だったは思わなかった。  戦争が起こるきっかけなど対した理由は必要ない。しかしその理由を読み解くことで得られる真実もあると、ウェルナーは考えていた。  今回の場合なら誰が得をするのかという点である。  フラウの幼木が盗まれケロベロスの森の加護が薄れた時に都合よく戦争が起こる。この場所は地理的にも両陣営の中心に位置し戦火に巻き込まれる可能性が高い。偶然にしてはできすぎている。誰かが手引きしたと考えるのが妥当だろう。仮にシャーク教授が盗人だったとして動機がわからなかったが、ようやく何か見え初めてきた。  ウェルナーが戦争の真意を見極めようとしている間に、教授達は学びの塔を護るか護らないかの議論を繰り広げていた。  聖騎士達に生徒が保護してもらうことには全員一致で賛成だったが、教授達は塔に残るのかどうかという問題に対し揉めに揉め。会議は長引いている。  ”学びの塔”は魔法使いにとって故郷のようなものだ。  この場所が失われるということは、全ての魔法使い達の帰る場所が失われるということである。それを護りたいという思いはどの教授にもあるのだが、戦争に耐えられるだけの知識を持った魔法使い。つまり教授のことだが、残念なことに今はたった7人しかいない。  対してグレイグ男爵の先発隊は千人もの大軍勢だそうだ。頼みの綱である深き森ケロベロスも”大地の幹”を怒らせてしまった今、その加護がうけられるのか疑問が残る。絶望的とまではいかないが、圧倒的に不利な状況というわけだ。  そもそも魔法使いは白兵戦には向かない。  長い詠唱の最中は無防備になり、接近されればすぐに斬られてしまう。かといって詠唱の短い呪文は鎧や盾で簡単に防がれてしまうだろう。
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