Ⅱ-Ⅱ

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 塔を守るとしたら拠点防衛をすることが一番有効な戦術だ。  これは魔法使いの得意な分野でもあるし、もともとかけられている塔の防衛機能を使えば悪くないとは思う。だが先ほどから、妙に避難を進める男がいた。  「ですから。魔法使いの未来は子供たちにかかっているのです。我々教師の務めは子供たちの安全では無いでしょうか。子供たちの安全のために我々も彼らと同行し教皇領へ向かいましょう。」  お世辞にもこのシルヴァラント地方は治安の良い地域とはいいがたい。魔物や盗賊などが街道をあるけばわんさかでてくるそうだ。彼の言っていることは至極全うなのだが、ウェルナーにはシャーク教授の言葉が胡散臭く感じた。普段嫌がらせを受けているからというよりも、むしろ幼木を盗んだのでは無いかと言う疑惑がそう感じさせているのかもしれない。  「自分は残るべきだと思います。ここは俺達の故郷だ。絶対に余所者に奪われてなるものか。。」  口火を切ったのは5年の担任で魔法体術の教授であるチャールズ教授だった。円卓を叩き熱弁するその様は故郷を思うというよりも、ただ自分の肉体を行使したいという欲が透けて見える。着崩した赤のローブから見える上半身は鍛え上げられており、魔法使いというよりも格闘家のようだった。  「私は生徒達のために残るべきでは無いと思います~。シャーク教授が言っているとおり、塔の外は魔法使いにとって危険すぎます~。」  3年のアリス教授が気丈にもチャールズ教授に反論する。  チャールズ教授がきっと睨むと、助けを求めるようにアリス教授は自分を見たが、すぐに視線を逸らした。何故か自分は教授会には出席するものの意見を言わせてもらえない。そのことを察したのだろう。他の教授がいない時は唯一会話をする教授ではあるが、他の個性の強い4人の魔法使いに睨まれない様にアリス教授も必死なのだ。  アリス教授の言っている危険にはもしかしたら聖騎士や教会の人間が入っているかもしれない。親魔派のリベラル騎士団が護衛につくというのは、随分と面白い動きをするものだとウェルナーは思った。彼らのことを信頼すべきか否か、宗教戦争を経験した教授達はそのことも懸念している。
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