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みんなは春休みになったことで、とても喜んでいるけど、私は違う。
だって、ルカが勉強なのか仕事なのか、よく分からないのことでアメリカに行ってしまっているから。
ルカがいない毎日なんて、私にとっては、具の入っていないおにぎりのようなもの。
塩むすびは嫌いじゃないけど、やっぱり味気がない、そんな感じ。
菅野邸のリビングで、窓の外を眺め、桜は頬杖をつきながら、はぁ、と溜息をつく。
「――桜は、ルカくんがいなくなって、つまらなくて仕方ないんだね?」
すぐ隣で本を読んでいた馨がぽつりと零した。
「あ、あんた、隣にいたの?」
驚く桜に、馨は目線は本に落としたまま、こくりと頷く。
とても長いまつ毛が弓なりのカーブを描いている。
柔らかな顔立ち。色素が薄めのウェーブがかった髪にとても白い肌。
これで、時に存在を感じさせずに隣にいるんだから、急に天使が現れたかと、一瞬錯覚してしまう。
双子なのに、どうして、こうも雰囲気が違うのだろうか、と桜は眉根を寄せた。
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