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ダイニングテーブルの上の大きなボールには、イチゴが山盛りとなっている。
形は不揃いでいびつなのも多いが、色だけはどのイチゴも真っ赤だ。
桜と馨は、そんなイチゴを前にごくりと唾を飲んだ。
「可愛さん、菜摘さん、私も手伝う」
「僕も」
テーブルに飛びついて言う二人に、可愛は「ありがとう」と微笑み、菜摘は「あら」とイタズラな笑みを見せる。
「食べたくなったんでしょう」
そう言ってボールからイチゴをふたつ取り、桜と馨の口の中にポンッと入れた。
「美味しい」「甘い」
頬に手を当てて目を細める二人に、菜摘は大きく頷く。
「そうよ、そして美味しいイチゴを作るから、ヘタ取り手伝ってね。つまみ食いもOK。でも、10個までよ。
まずはキッチンで手を洗ってくるように」
「はーい」
笑顔でキッチンに向かう桜と馨の姿を目で追いながら、可愛は、ふふっ、と笑った。
「相変わらず、菜っちゃんは子どもの扱い方が上手」
「えっ?そうですか?」
「そうよ」
さすが香港で長く、施設に顔を出して親のいない子の面倒を見てきただけある、と可愛は微笑みながらイチゴのヘタを取る。
二人は手を洗ってすぐに、テーブルにやってきて、作業をはじめた。
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