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「でしょう」
なぜか菜摘が得意げな顔を見せていると、
カチャリ、とキッチンにある勝手口のドアが開き、パリスが顔を出した。
「やあ、いい匂いだね」
柔らかく目を細めるパリスに、双子は「わあ、おじさま」と声を上げる。
「パリス、そんな恰好でどうしたの?」
と、菜摘は、パリスを上から下まで見た。
今日のパリスは黒いスーツをまとっている。
総帥を引退してからと言うもの、あまり見なくなった姿だった。
「突然だけど、NYに行くことになって。いや、3日くらいで戻ることになると思うけど」
「相談役の出番?」
ふふっ、と笑って尋ねる菜摘に、パリスは「その一環かな」と笑みを返す。
「シーレンがアメリカの福祉団体に表彰されることになってね。そのパーティ、僕に出席してほしいって。
菜摘も、もし良かったら」
「シーレンには申し訳ないけど……」
菜摘は、ふるふると首を振る。
元々、菜摘は華やかなパーティは苦手であり、それでも香港にいた時は、頑張っていたのだが、帰国した今、なるべく出席したくないと思っていた。
「私は、カフェで店番してるから」
と言い訳がましく続けた菜摘に、パリスはくすりと笑う。
「そう言うと思った。それじゃあ、僕一人で行ってくるよ」
パリスがそう言った瞬間、
「お、おじさま、私も連れていって!」
と、桜は思わず声を上げた。
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