天使の憂鬱

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――― ――――― ―――――――― 『パリスがいいって言ったなら』 と、両親の承諾を得た桜は、部屋に入り、嬉々として荷造りをはじめていた。 かわいらしいキャリーバッグに、以前樹利に作ってもらった桜色のドレスを入れる。 続いて白色の靴を入れた時、様子を見ていた馨が「あれ」と声を上げた。 「その靴、樹利さんに作ってもらった靴じゃないよね?」 「……そう、私が自分のお金で買ったの」 樹利さんに作ってもらった靴は、踵がペッタンなんだもの。せっかくドレスに合わせる靴なら、ヒールが高い方がいい。 心でそう呟いて丁寧にバッグの中に入れる。 「変にカッコつけないで、樹利さんの靴にしておいた方がいいと思うよ?」 「いいの!」 桜は強く遮って、キャリーバッグをしめる。
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