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「さて、準備できた。馨、お土産は何がいい?」
「ん~、なにか美味しいもの」
気が抜けたように言う馨に、桜は小さく笑って「分かった」と頷き、キャリーバッグを手に部屋を出た。
リビングに戻ると、可愛、菜摘、パリスだけではなく、まりあ、雄太、樹利も揃っていて、桜は少し驚いた。
まりあと雄太は、パリスに桜のパスポートを手渡しながら、「よろしくお願いします」と会釈をしている。
一方のパリスは「やだな、あらたまって」と笑っていた。
久々に皆が揃っている様子に桜が圧倒されていると、
「桜、パリスとNYに行くって?」
樹利がくしゃっと頭を撫でた。
「うん!樹利さんに作ってもらったドレス着てパーティに出席するの!」
「そりゃいいな、ナンパされるんじゃねーぞ」
樹利は、桜をふわりと抱き上げて、額を軽く小突く。
「え、ええ!ナンパ?」
目を輝かせる桜に、雄太が小さく息をついた。
「桜、樹利さんのジョークだよ。そんな期待した目をしない。何より君を本気でナンパしようって男がいたら、それだけで危険人物だ」
「い、いやね、パパ。期待なんかしてないわよ。だけど、二歳のママに一目惚れしたパパにそんなこと言われたくないわ」
「二歳のママに一目惚れ……。いや、それは少し違う」
そこまで言って言葉をなくした雄太に、皆はドッと笑った。
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