天使の憂鬱

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車はそのままマンハッタンに入り、五番街、セントラルパーク入口である58丁目にあるプラザ・ホテル前で停車した。 桜はパリスと共に車を降りて、ヨーロピアンな洋風建築のホテルを前に、「うわあ」と目を見開いた。 「このホテルのこと、可愛さんに聞いたことがあるの」 「ああ、そういえば、可愛と樹利が結婚したばかりのころ、このホテルに来たことがあるんだよね」 「あら、違うわよ、おじさま。 空港で樹利さんにプロポーズされた可愛さんだけど、ご両親に最初結婚を認めてもらえなかったの。 だけどNYに行くことは許してもらえて、先に樹利さんが渡米して、それから一か月後に可愛さんがこのNYに来たの。 樹利さんは、このザ・プラザで開かれていたジャラベールのパーティに出席していてね、その会場で二人は再会したのよ。 なんてロマンチック!」 きゃあ、と声を上げる桜に、 「そうだったね、桜はよく覚えているなぁ」 パリスはくすくす笑いながら頷き、「さっ、行こうか」と手を差し伸べる。
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