天使の憂鬱

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――― ――――― ―――――――― 「なんだか、静かだな」 樹利は菅野邸のリビングを見回して、ぽつりと零す。 ダイニングテーブルで可愛と菜摘とまりあの三人が向かい合って座り、のんびり語らいながら編み物をし、ソファーでは馨が黙々と読書をしていた。 「桜が一人いないだけで、とても静かね」 可愛は編み物の手を止めて、くすりと笑う。 「本当だな」 と樹利は笑って、馨の隣に座り、 「馨は一緒に行かなくてよかったのか?」 馨の頭に手をのせて、くしゃっと撫でた。 「うん、ちょっと行きたいなとは思ったんだけど……」 馨は本から目を離して、樹利を見る。 「もしかして、遠慮はしたのか?」 「ううん、そうじゃなくて」 と馨は頭を振って、ぼんやりと宙を眺めた。
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