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シンは預かった新刊と菓子折りを手に、菅野邸へと急いでいた。
新刊の表紙には『わが家は祇園の拝み屋さん』と記載している。
京都在住のこの本の作者と知り合ったのは、年末の出版社でのパーティの席。
『樹利さんをモデルに作品を書きたい』と彼女が申し出たのは、シンが近代ホラー小説大賞を受賞し、その受賞式でのことだった。
受賞パーティには、樹利や可愛、パリスに菜摘、雄太にまりあ、馨に桜と個性豊かな菅野家のメンバーが参加していたのだが、
彼女の目には、他の誰よりも樹利が強烈に映ったらしい。
そうして、彼女は『わが家は祇園の拝み屋さん』という作品を書き、『菅野樹利』をモデルに『宗次朗』というキャラクターを作り出した。
主役ではなく、主役たちを見守る主要人物の位置づけだ。
『樹利さんをモデルになんて、どんなものだろう』
とタカをくくっていたシンだが、作品を読んで、
『よくもまぁ、ここまで彼の性格をつかんだものだ』
と驚いたのが記憶に新しい。
作品はシリーズ化されて、先日3巻が発売され、シンの許にお礼の書状とともに新刊と菓子折りが届いたというわけだった。
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