ヤキモチ

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「ごめんなさい、変なところ見せちゃったわね。」 苦笑を浮かべながら、白石先生は言う。もう大丈夫 みたいだ。 「たまにはいいじゃないですか、そんな時があっても。」 「そうね…ありがとう、早坂さん」 その時、初めて見た先生の笑顔に、私は一目惚れを した。そして、初めてもらった感謝の言葉は、その 笑顔同様に、優しく暖かいものだった。 「そろそろ帰りますか」 「そうね」 「家まで送ります」 遠慮する先生を説得して。今度は2人肩を並べて、 再び電車に乗った。駅名だけを告げ、私の肩で無防 備に眠ってしまっていた先生を起こして電車から降 りる。もうすっかり日は暮れていた。薄暗い道を並 んで歩いていると、すぐに先生の家に着いた。昨日 まで想像もしていなかった今がここにある。またこ うして隣を歩けたら…。 「今日はありがとね、助かったわ。」 「いえ…あの、先生!」 さっきまで考えていたことを、思い切って聞いてみ ることにした。 「先生のこと心配なので、もし迷惑じゃなかったら、また一緒に帰ってもいいですか?」 先生は少し驚いているみたい。やっぱり迷惑だった かな…生徒と必要以上に関わるようなタイプじゃな いし。 「いいよ」 「あ、やっぱり迷惑、って…え?」 先生、今なんて…。 「一緒に帰ってもいいって言ってるの」 「本当ですか?迷惑じゃないですか?」 そう尋ねると、先生はニヤッと意地悪な笑みを浮か べて、 「守ってくれるんでしょ?」 そのセリフは反則だ。 「もちろんです」 「よろしくね、ボディーガードさん」 こうして私は、白石先生専属のボディーガードとな った。
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