ヤキモチ

6/8
112人が本棚に入れています
本棚に追加
/217ページ
それから半年ほど経ったある日の放課後。廊下で、 去年授業でお世話になっていた、国語科の環先生に 呼び止められた。今年は私のクラスの授業に当たっ ていないので、会う機会がなかったため、何だか懐 かしい。 「また図書室にも顔出してね」 「はい!」 しばらく談笑して、そろそろ別れようかという時。 「早坂さん」 突然後ろから名前を呼ばれた。大好きなその声は決 して穏やかなものではなかった。 「白石先生…」 「ちょっと来て」 完全に怒っているようだ。私、何かしたっけ…。環 先生に一言掛けようと思ったけれど、先生は私を見 て楽しそうに笑っていた。何が面白いんですか、環 先生。 教室に入って行った白石先生に続く。 「あのー、先生怒ってます…よね?」 恐る恐る聞いてみる。地雷だけは踏まないように。 「別に。」 とは言うものの、明らかに不機嫌な白石先生。 「どうしたんですか?」 「環先生と話してる貴女が楽しそうだったから…嫌だったの」 それって…ヤキモチだよね?国語力の乏しい私でも 、さすがに分かってしまった。まずはとりあえず、 謝っておいたほうが良さそうだ。 「ごめんなさい…」 そう謝ると、 「私以外見ないで」 今度はさらに衝撃的な言葉が返ってきた。立派な告 白のように聞こえるが、当の本人は自覚なしのよう だ。まったく…私のプリンセスはわがままだ。 「はい」 最も、私には拒否権などないので、頷くしかなかっ たけれど。でも、好きな人にそう言われて嬉しくな い訳がなかった。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!