ヤキモチ

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それからは出来るだけ、ヤキモチの種になるような 行動は避けた。先生を怒らせることもなく、平穏な 日々を送っていた、そんなある日の放課後のことだ った。廊下で友達に話しかけられ雑談していると、 突然友達の顔が凍りついた。 「莉瑚」 後ろに気配を感じたと同時に、名前を呼ばれた。そ の声は振り向くまでもなく白石先生のものだとわか った。「莉瑚」なんて呼んでくるあたり、かなりお 怒りらしい。友達に口パクで「ごめん」と伝え振り 返る。怒ったような悲しいような、そんな表情を隠 しきれていない先生についていく。教室に入ると、 先生は鍵を閉めた。 「約束破ったわね」 「ごめんなさい…」 恐くて俯いたまま謝る。 「どうして?私のこと嫌いなの?」 そう言った声が震えていることに気づいて顔を上げ ると、先生はボロボロ涙を流していた。必死に首を 横に振ると、先生が言葉を続ける。 「ごめん…分かってるの、こんなの間違ってるって。でもこんな気持ち初めてで、どうしたらいいのか分からないの…」 不器用でヤキモチ妬きで、頼りない先生だけど、そ んな先生も大好き。その想いが伝わるようにそっと 先生に抱きついた。先生の腕が背中に回されて、ギ ュッと力が込められる。 「好きなの、あの日からずっと…頭から、心から、あなたが消えないの。どうしょうもないくらい…莉瑚が、好き。」 「私も…あの日からずっと、白石先生のこと大好きです。」 「ねぇ、私はどうしたらいい?」 先生が弱々しい声で尋ねる。 「ずっと先生のそばにいさせてください」 「うん」 「ずっと私のこと好きでいてください」 「うん」 「それから、不安にならないでください。私は先生以外を好きになったりしませんから。」 「わかった」 そして最後に、「約束です」と唇を奪った。 今日から私は、白石先生のボディーガード兼恋人で す。 Fin
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