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ゴールデンウィークも終わり、あれから何事もなく過ごして五月の中旬。僕の通う私立小町女子高等学校ではそろそろ体育祭の季節であり、女子高ながらも連日やる気に満ち溢れた体育会系女子たちの熱気に包まれて、真夏のような暑苦しさだ。
あれから、彼女が忘れていったワンピースを取りに来ることはなかった。処理に困って届けに行こうにもどこに住んでいるのか分からないし、そもそも家出をしているのだから居どころなど分かるはずがない。捨てるに捨てられず、とりあえず洗濯をして他の衣類と一緒にタンスに入れてあるが、ラフなものが多い僕の服の中では殊更目立ち、なんだか場違いな空気を放っていた。
「ねえ彼方、何ぼんやりしてるのよ」
このままワンピースを取りに来なかったらどうしようかということに思いを馳せていたら、友達の一人が不満げな声を上げた。
僕がぼんやりしているのはいつものことなんだけど。
「ごめん、何だっけ?」
「だから、今日転入生が来るらしいのよ。どんな子か分からないけど。……何か知らない?」
「いや、その噂自体初めて聞いたけど……」
いつの間に広まってたんだよそんな噂。
どんな子だろうという話題で盛り上がっているうちに、始業のチャイムが鳴った。
「おはようございます。もうだいぶ噂になっているみたいだけど、今日はうちのクラスに転入生が来ます。省いたりしないで、仲良くするんですよ。佐々さん、入ってきなさい」
そう言われてやたらにスムーズな引き戸を開けて入って来たのは、指定のセーラー服をあくまで清楚に着こなした、湿気の悩みとは無縁そうな綺麗な髪を持つ少女だった。
言うまでもなく、あの雨の日にずぶ濡れていた彼女である。
「佐々綾乃です。よろしくお願いします」
そう言って顔を上げた彼女の顔には、でかい絆創膏が貼ってあった。
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