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目の前には夕日に照らされ赤くなった海が広がっていた。
この海はどこに行くのだろうか。
彼は追いつかぬ思考のまま、その丘でぼんやりとそんなことを考えていた。
少女のような風貌の少年は、まるで人形のように風に押されて揺れていた。
やがて彼は一歩足を踏み出し、真っ赤な海へと吸い込まれていった。
――――
「……っ!?」
そんな夢から目を覚ました青年は、またかと深く息を吐く。
何度も見るその後味の悪いこの夢は、彼の過去そのものであった。
その過去というのも、もう千年以上も前の話なのだが……
「あ~、胸くそ悪い!」
青年――最上紅葉(もがみくれは)はまだ眠気の残る頭でベッドを下りた。
眠そうに目元を擦りながらドアを開けると、「おはよう」と澄んだ声が聞こえた。
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