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それは今から約千年前、平安まで遡る。
煌びやかな服を着た貴族が集まる都から離れたとある街は、女主が治める街であった。
その街の女主は差別を嫌う清い心の持ち主で、皆に信頼されていた。
その女主には一人息子がいたのだが、その子の父親……女主の夫は都へと呼ばれた際盗賊に殺されてしまっていた。
彼女は息子を一人で育て、八年の月日が流れていた。
息子も素直な子で母親の言うことをよく聞くできた子であった。
この息子が紅葉である。
女主は紅葉を『女』として育てていた。
それは代々街を治めていたのが『女主』であったからだ。
この事はどうしても曲げたくないと人一倍努力した女主は、身も心も見事に整った紅葉を育て上げた。
紅葉もそんな母親が大好きで、幸せな日々を送っていた。
ある日のこと、女主が街を散歩していると子供や大人の罵声が聞こえてきた。 何事かと声の方に近寄ると、白髪に赤目の女性が幼い少年を抱えてうずくまっていた。
女主は群がる民を宥め、二人を屋敷へと連れ帰った。
紅葉は初めこそ驚いたものの、自分と変わらない白髪の少年に明るく接した。 母親譲りの優しさは、差別を許さなかった。
その少年が白斗である。 こうして二人は出会った。
白斗の母親は警戒を解きはしなかったが、それでも女主は彼女に普通の人間として接した。
もちろん、紅葉も同じように。
次第に彼女は少しずつではあったが心を許すようになり、白斗もまた紅葉に特別な気持ちを持つようになっていた。
紅葉も白斗に同じ気持ちを抱くようになり出会って二年目のある日、白斗は何があったのか丘の上でボロボロの体を震わせながら一輪の花を紅葉に差し出した。
「けっ、結婚してください!!!!」
ボロボロの白斗を見て泣いていた紅葉は、その花を受け取り嬉しそうに頷いた。
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