53人が本棚に入れています
本棚に追加
「っ!」
またもそんな夢を見て、紅葉は身を起こした。
この夢には続きがある。
この後紅葉が目を覚ますと自分が飛び降りた崖の前で、大きな木の根元に凭れるように眠っていた。
何があったのか分からなかった紅葉はそこで自分の姿が男性らしくなっていたことに気づく。
混乱する紅葉の元にやってきたのは成長した白斗であり、白斗は紅葉に何があったのかを簡単に説明した。
「うまく話せないんだけど、僕は神様になったんだよ。
信じられないだろうけどね。
そしてここは未来、僕達のいた時代から千年くらい経った未来なんだよ。」
理解の追いつかない紅葉はただ大人しく白斗を見ていたが、当の白斗は話を続ける。
「君は今幽霊なんだ。
でもただの幽霊じゃなくて、人にスゴく近い幽霊。
だから普通の人には人間に見えてるんだ。」
そこまで話して白斗は急に俯いた。
そして重たそうにごめんと口を開く。
「もう君は死んでる。
だから君は……もう、死ねないんだ。」
悲しそうに目を濡らして白斗はまっすぐに紅葉を見た。
そしてポケットから一つのネックレスを取り出すとそれを紅葉に差し出した。
「これは、僕が勝手に結んだ契約のしるしだよ。
君に持っていて貰わないといけないんだ。」
受け取ってくれるかな?とその黄色く光る石を紅葉に差し出す。
白斗は右目を包帯で覆っていた。
そして彼の瞳は黄色。
紅葉はまだ戸惑っていたが、そのネックレスを受け取った。
そのネックレスを受け取った瞬間、紅葉はもの凄い熱に体を包まれる感覚に陥った。
(あぁ、これは火だ。)
紅葉は思った。
自分の家を焼き、親を焼き、自分を死に追い込んだ炎は、紅葉の体を構成するものとなった。
つまり紅葉は自由に炎を操ることができるようになったのだ。
その炎で何でも作ることができる。
家も、家具も、お金も、人ですら作れるのかもしれない。
だが紅葉は絶望した。
しかしその絶望を口にすることはできない。
ようやく紅葉は、白斗が謝った意味が分かった気がした。
最初のコメントを投稿しよう!