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「パパ、お願いがある」
娘を寝かしつけた後に帰宅した夫の真向かいに座った。
仕事から帰る時間を計算して調理した焼き鳥をつまみにビールを飲む彼が「なあに?」と暢気に聞いてくる。
「パパが毎日仕事が大変なのも、休日くらいゆっくりしたいのも解ってる。
でも、私もたまには休みが欲しい」
娘が生まれ、実家にひと月ほど居たとき以来、私には自由な時間がない。
普段の生活はおろか、トイレさえゆっくり行けない。ドアを閉めようものなら、板一枚隔てた向こう側で泣き叫ばれてしまう。
お陰でトイレのドアはいつも半開き。心底嫌だ。
「舞が昼寝してる間は自由時間だろ?好きなことしたらいいじゃんか」
「簡単に言わないでよ!!家から出られる訳じゃないのよ?
映画見に行ったり、自由にランチしたり、そんなのもう何年してないと思う?」
私だってたまには思うことをしたい。
欲するものを食べたい。
激辛パスタとか、味の濃い中華とか、いつも選択肢から外さざるを得ない。
取り分けて食べることを考えたら、結局選ぶメニューは私の希望通りになんてならないのだ。
「一人の時間が欲しい」
本心が溜め息と共に溢れた。
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