27人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
土曜日はいろんな場所が混雑している。
一人でゆっくり映画を、とも思ったけれど、それだけで数時間潰れるのは惜しい。
折角だから思いきって遠出しよう。
もう随分近所の散策しかしていないのだ、トイレの心配や、娘の機嫌を窺うこともなく、気儘にステアリングを操れる時間なんてなかなかない。
結局、独身時代によくドライブしたコースを辿った。
髪の毛が乱れるのも構わず窓を全開にして、左手に広がる青い海を満喫する。
柔らかい春の日差しを反射して煌めく海は、私の気持ちを更に持ち上げた。
3年の間に沿道にあった店が所々変わっている。
以前立ち寄った喫茶店は、外観はそのままに雑貨屋になっていた。
少し寂しくなる。
子育てに追われ、代わり映えのしない毎日を送っている私と違って、世の中は変革している。
そんなことにも気付かず、ただ延々と繰り返す日々が今の私の全てで。
……私はもっと自由だったはずなのに。
休憩スポットに車を止めた。
いつものコース、いつもの行動。
今の私はあの頃の私。
海はどこまでも青く輝いて、波は自由に寄せて返す。
波の音が心地よくて、私は暫く佇んで海を眺め続けた。
最初のコメントを投稿しよう！