ママをお休みします

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海が見える小高い丘の上に、そのペンションはあった。 海水浴には早いこの時期、常時レストラン経営をしているここは人もまばらで穴場だ。 重厚な木材がふんだんに使われた店内は、それだけでも落ち着くのに、窓から見える風景が益々気持ちを和らげた。 おすすめのランチコースを注文し、庭の花を眺めながら、ふと夫と娘を思った。 『昼なら弁当買うか食べに行くから気にするな』 彼はそう言ったけれど、本当に大丈夫かな。 舞はお昼ご飯に何を食べたいか聞くと、大抵「ツルツル」と答える子だ。 彼女の大好物はうどん。 彼のことだから、多分娘に言われるままにうどんを食べるだろう。 出されたバゲットにバターを塗り、一口かじる。手作りバターの風味と塩加減が絶妙で、これなら舞も美味しいって言うだろうなとぼんやり思った。 サラダのドレッシングも、スープも、パスタも申し分ない味で、食後のコーヒーもとても美味しかったけれど。 一人でゆっくりランチを楽しみたいと、張り切ってレストランを選んでコースを堪能したけれど。 片やうどん、片やランチコース。 一人で贅沢しちゃったなと、また後ろめたさが胸の片隅に巣食った。
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