1252人が本棚に入れています
本棚に追加
「…通りたいんだけど」
呟いた私の声に振り返ったのは
深碧の冷たい瞳。
と、
その向こうで今にも崩れ落ちそうに
うつろな瞳をした女の顔が目に映る。
薄暗い灯りの中、じっと見上げた
その男の唇には、彼女がつけている
真っ赤なルージュ。
まるでその様は、暗闇に現れた
バンパイアのようで。
唖然とする私に気付いた彼女が
その男の胸を両手で突き放すと
私の横を俯きながらすり抜けて
店の中へと逃げる様に戻って行く。
最初のコメントを投稿しよう!