闇の中で

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「…通りたいんだけど」 呟いた私の声に振り返ったのは 深碧の冷たい瞳。 と、 その向こうで今にも崩れ落ちそうに うつろな瞳をした女の顔が目に映る。 薄暗い灯りの中、じっと見上げた その男の唇には、彼女がつけている 真っ赤なルージュ。 まるでその様は、暗闇に現れた バンパイアのようで。 唖然とする私に気付いた彼女が その男の胸を両手で突き放すと 私の横を俯きながらすり抜けて 店の中へと逃げる様に戻って行く。
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