闇の中で

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「はっ…逃げられちゃったし」 口元に付いたルージュを 手の甲で拭いながら笑う その男の妖艶さに一瞬 目を奪われそうになったけど。 私は小さく首を振って 男の横を無言のまますり抜けて 洗面所のドアを開けた。 と、同時に私の後ろから その男が洗面所の中になだれ込んで そのままカチャリとドアの鍵を締める。 「…何よ、あなた」 「邪魔してくれたお礼あげる」 ニヤリと微笑んだ彼は そのまま腕を掴むと 洗面所の壁に私を押し付けた。
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