深碧の瞳

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登り始めた太陽が、左の方に見える 日本武道館のたまねぎを照らして その反射の眩しさに目を細める。 桐生の家と私の家の間には 高級住宅街が軒を連ねていて セレブな雰囲気の奥様が これまたドレスアップさせた 可愛いワンちゃんを従えて すれ違って行く。 彼女はきっと幸せな生活を 送っているのだろう。 それを羨ましく思う時も 当然ある。 私と桐生の関係には いつかきっと終わりが来るのだから。 もちろんそれは覚悟しているし 桐生が言ったように、 私も桐生が誰かを本気で愛した時は それを止めるつもりはない。 桐生は選ぶのは自分だと言ったけれど 澤木さんのように好きですって オーラをあんなにもあからさまに 表情に出せる人がきっと 一番似合うんじゃないかと 私は思う。 少し屈折した性格の桐生だからこそ ああいう素直な人が… 彼の心を開く事が出来る鍵を 持っているんだと思う。 私には絶対持つことが出来ない 無条件の愛という名の鍵を…。
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