噂のあいつは新入生!

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「おっ、意外と重いな……」 「いいよ、春兄。春兄だって部活の荷物とか、重いでしょ?」  慌てて両手を差し出すが、春兄は紙袋を後ろ手に回して隠してしまう。 「嘘、嘘。これくらい持てなきゃ、きつい練習耐えらんないよ」 「でも……」 「んー……あ、じゃあさ、今日クッキー作ったら、それ俺にも分けてよ」 「え……」  思いがけない言葉に思わず目を瞬く。春兄は少し恥ずかしそうにはにかんだ。 「俺、甘いもの結構好きなんだよね。……だめ?」 「う、ううん! 全然!」 「やった。約束な」  全力で首を横に振ると、春兄はくしゃりと私の髪を撫ぜた。その仕草にどきりと胸が高鳴る。  少し癖のあるミディアムヘアーは実はコンプレックスの一つだったりする。妹のひかるはさらさらストレートのショートボブで、昔はその髪が風に揺れる度に羨ましい気持ちで眺めていた。  春兄の一歩後ろを歩きながら、そっと頭に手を遣る。心臓はまだどきどきと音を立てていて、私は熱くなった頬を隠すように俯いた。  今だけは、この髪のことも好きになれそうな気がした。 「じゃ、俺はこっちだから」  春兄は生徒たちでひしめく校舎の入り口で立ち止まり、私に紙袋を差し出した。 けれど私がそれを受け取る前に、何かを見つけた様子で正門の方へ手を上げる。 「内海!」 「……あ、三井先輩。おはようございます」  眠そうに目を擦りながら、一人の男の子が軽く頭を下げて近付いてきた。  すらりと高い背に、少し色素の薄い瞳、人形のように整った目鼻立ち……思わず見張るような美少年だ。 「お姉ちゃん、こいつだよ。私が昨日言ってた男の子」
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