消えない傷

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葵さんと会う前の俺は浅はかで 本気で彩音に溺れた時期もあった。 仕事の忙しい旦那とは セックスレスだとかで ベッドの上の彼女は 女豹のように変わるのが たまらなく好きだったから。 「じゃあまた私とセフレになる?」 俺の膝にまたがって 唇を重ねる彩音に貪られながら 目を開けたままぼんやりと それを見つめる。 「それでもいいかも…」 「ふっ… 壊れそうな智樹って めちゃくちゃそそられる」 そう呟いて深く落とされた唇に 静かに目を閉じた。 …葵さん… ごめんね…俺…… またここに戻っちゃった…。 あなたが一番嫌いな… この泥沼に… また落ちて行く。 「ねぇ智樹… もし私が離婚したらどうする?」 「…え?」 「そしたら智樹だけの ものになってあげてもいいよ」 ニコリと微笑んだ彩音は そう言って俺の肩に 赤い傷を残した…。
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