第1章

3/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 時刻は8時50分。まさかのいつも通り。急ぐ必要もないのでいつものペースで駅へ向かいながら髪の毛をいじいじして会社へと向かった。 木曜日  午前7時04分。目が覚める。今日は気を使う業務があるせいかアラームよりも早く目が覚めた。こーゆう所に自分の気の弱さとまじめさがでているなと思う。時間にゆとりがあるので携帯ではなくオーディオシステムからメロディを流す。聴きたい曲を自分に聞きながらくるりの『ばらの花』に決めた。4畳半の小さなハコに、プレーヤ不在、オーディエンス自分一人の仮想ライブが始まる。5分があっというまに過ぎた。日当りのあまりよくない部屋だけども、うららかな陽光の下まったりしている気分にさせてくれる。音楽が全て救ってくれるわけじゃないけどやっぱり自分には必要だと思う。なんかこんなことを考えさえてくれた5分だった。  ベッドからおりてルームソックスを履き、洗面台へ向かう。鏡に映る自分と目を合わせる。20代の不摂生から染み付いた目の下のクマが今日はいつもよりも濃い。いい感じである。生きている感じがちゃんとしていい。丁寧に洗顔をして、ワンタフトブラシを使って歯を一本一本、歯と歯茎のきわもしっかり磨く。  リビングへ上がり、豆をミルで粉にしてコーヒーを淹れる。淹れ方は素人だけども、香りと味が格段においしいと思う。同居人が一人、先にいたので彼女にもコーヒーを淹れてたわいのない会話を楽しむ。ゆっくりとだが確実に時間は進んでいる。あくせくして準備しない分、今日はいくぶん神経が研ぎすまされているよう。これなら本日の業務もきっと大丈夫。  時刻は8時30分。部屋に戻っていつもの格好に着替えて髪を整えて家を出る。8時50分。問題ない。今日もいつも通り。 金曜日  午前8時40分。遠くからメロディが聞こえている気がして目が覚めた。ブルーハーツの『情熱の薔薇』のサビの部分が流れていた。何度目かのスヌーズ。完全に寝坊した。明日行けば休みという認識が僕から緊張感を無くしてしまっていた。遅刻は覚悟して颯爽と準備をして家を出る。髭はマスクで隠してOK。髪は会社で直す。  時刻は9時00分。どうあがいても5分から10分遅刻するので急ぐのを諦める。駅に着くまで、電車に乗っている間、会社に向かっている最中、どんな言い訳が相手の気を緩める事ができるだろうかを考えて出社した。  結局15分の遅刻である。 土曜日
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!