30人が本棚に入れています
本棚に追加
《後ろの門番の身体検査受けて》
ゴーレムから聞こえてきたのは身体検査を受けろという指示だった。
私の「は?」とアレンの「え」というセリフが重なる。
「門番って…このデッカい顔?」
訝しみつつも、門番らしい顔面と向き合った。
「………」
「………えーっと」
「………どうも」
アレンが一声掛けるなり、ぐおっといきなり城門の顔が目の前に迫ってきた。
「ヒッ!?」
びっくー!
恐怖心から固まっているアレンに、私は女子らしからぬ悲鳴を上げて、文字通り飛び上がりアレンにしがみつく。
ピコ!
門番の両目から光が当てられ、スポットライトのごとく私とアレンを照らす。
そして、その大きな口を動かした。
「ふんふん…そっちのお嬢ちゃんは人間だな。で、もう1人は…」
「ぎゃあああ!! 喋ったあああ!! お化けぇぇぇ!!」
「大丈夫ですよミュア! お化けじゃありませんよ」
ただ怖いという一心で叫ぶ私を、アレンが苦笑いで宥(なだ)める。
ヴヴッ…。
門番は身体検査を続行させるが、ミュアと違って、アレンの姿が映らない。
バグかと思った瞬間、アレンの左目の上に逆さまになった黒い星印が明確に映る。
ブ──!!
突然門番の両目に×が浮かび、ブザーのような音が鳴り響く。
直後、門番が両目をひん剥いて叫んだ。
「こいつアウトォォオオ!!!」
「へっ!?」
気圧されるアレン。不穏な空気を感じてか、その顔色は悪い。
「こいつバグだ! 額のペンタクルに呪われてやがる! アウトだアウト!!」
「ぎゃああああああ」と叫びながら、両目から涙を滝のように流し、同時に鼻水も流出。
「ペンタクルはアクマの印!! こいつ奴等の…千年伯爵の仲間だー!!!」
「んなっ?」
狼狽(うろた)えているアレンを横目に、急に泣き出した門番に恐怖心が薄れた私は落ち着かせようとする。
「え、ちょ、なんでそんな結論に至ったの。アレンはアクマじゃな──」
──ザッ!
城門の上に、1人の青年が現れた。
長い黒髪が風に靡(なび)き、明らかに殺意が籠(こ)もった目つきでアレンを睨み付ける。
アレンと青年の2人の視線が交錯した。
青年が細身の日本刀に右手をかけているところを見ると……あれ、絶対攻撃してくるよな?
「1匹で来るとは、いー度胸じゃねぇか…」
刺すような鋭い瞳で、相手は刀を鞘から抜いた。
ギラ、光に反射して鈍く光る刃先。
最初のコメントを投稿しよう!