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「大丈夫? 怪我はない?」
勇敢なその人は、腰が抜けて地面に座り込んでいた私に右手を差し出して言った。
品のある整った顔立ち。
サラサラの白髪(シルバーブロンド)。
銀灰色の澄んだ瞳…。
ヒロインのピンチに颯爽と現れて、敵……というか得体の知れない化け物を蹴散らした彼の第一印象は……
『まるで、王子様みたい』
だった。
情けない話ではあるが、単純な私は彼──アレン・ウォーカーにそんな具合に惚れ込んでしまったのである。
それだけならまだいい。
彼がエクソシストで、今は『黒の教団』という場所に向かっていると聞いて、あろうことか、自分も一緒に行くと言い出したのだ。
「で、ですがミュア……」
「私も行くッ! 私も、私も……アレンと同じエクソシストになるんだから──ッ!!!」
慌てふためくアレンの反論も虚しく、私の叫び声は夜空に響き渡った。
──そう、すべての始まりは、あの日の出会いからだった。
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