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一週間程前──。
とっくに日が暮れ、星が見える夜の街中を、私はトボトボ歩いていた。
「はあぁ~…ちょーっとテストが悪かっただけで、こーんな時間まで居残りさせなくたっていいのに…シスターの人でなし!」
自身の「32」と赤ペンで書かれた化学の答案用紙を睨む。
私、ミュア・アヴァンシア。
ミッションスクールに通うごく普通の女の子。
笑顔と元気が取り柄で、勉強はちょーっと……いや、かなり苦手。
ちなみにうちの学校の赤点は35点。
つまり私は赤点を取ってしまったのだ。
そのため、今まで居残りの補習授業を受けていたのだ。
「か弱い女の子をこんな時間まで居残りさせて…罰が当たっても知らないんだから!」
ぶつくさ文句を言いながら、人気の無い歩道を歩く。
オマケに最近、夜に出歩いてて行方不明になる人増えてるし……と朝の集会でシスターが注意喚起してた事を思い出す。
なんでも遺体は見当たらなくて、行方不明者の着ていた服などが現場に残されてるんだとか。
うーん、不気味。アンド謎。
まあいいや。とにかく早く帰ろっと。眠いし。
足早に道を急いでいたら、ふと妙な気配を感じた。
「んっ……?」
思わず足を止めてその場に立ち尽くす。
えもいわれぬピリピリとした感じが、その場を支配した。
曲がり角でそのまま動けずに身を潜めていると、数メートル先に大きな卵型の物体の姿を視認する。
なに…あれ。
無駄に視力の良い私はその異形に目を見開く。
歪な球体から突き出た何本もの太い銃身。
老人のような顔がその物体の中央に確認できた。
声を出しちゃいけない。
私の存在を知られたら──おそらくあの未確認物体に『殺される』。
本能的にそう感じた。
恐怖に震える手で口許に手をやり、自ら口をふさぐ。
が、その直後──どくんッ。
心臓が大きく跳ね上がった。
かと思えば、今度は身体が熱くなり、熱を発する。
な……なに?
この感覚は……!?
「うっ……」
ガクンと膝をついた私は、両腕を胸の前でクロスさせ、自身の肩を抱く。
苦しむ私の存在に気付いたらしい球体は、無数の銃口をこちらに向けて、スーッと空中を滑るように移動してきた。
目の前に寄って来たその異形を改めて目に映すと、全くもって不気味だと思った。
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