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コムイさんが投げつけてきた本が何かに当たって空中で弾かれた……いや、違う。
遮られたのだろう。
この、水色をした謎の壁によって。
私の周りを半球体状に囲むように水色の防御壁が張られているのだ。
「コムイさん……これって?」
「バリアだよ。いやー、ちゃんと発動して良かった! どうかな?」
「えっと…」
試しに、内側からノックをしてみた。
コンコン。
目視では極薄の膜のようだが、ガラス窓のような感触が感じられる。
「見た目よりずっと頑丈そうです」
どうやら、さっきコムイさんが起こした「私に本を投げる」というアクションは、このバリアが正常に張られるかという実験だったらしい。
「あの、これどうやったら解除されますか?」
「そこはミュアちゃんの意識で切り替えられるはずだよ」
「そんな事言われたって…」
そう反論しようとしたら、シュン──。
急にドーム型のバリアが消えた。
「???」
どうなってるんだ?
槍でありながらエネルギー弾を撃ち、空も飛べて、尚かつバリアまで張れるなんて…。
「キミの心次第で、この武器は如何様にも性能を変えるだろう。この『神聖ノ魔槍【セイクリッド・パルチザン】』は」
彼は、その名を語った。
私の対アクマ武器の正式名称を。
「セイクリッド・パルチザン……」
私はその名を噛み締めるように呟いた。
「あらゆる障害物を斬り払いのけ、どんな壁も穿ち貫く──兄さんはそんな願いを込めて、これを武器化してたの」
リナリーが付け足すように補足説明をしてくれる。
「ミュアが信じる道をひたすら突き進めるように、って」
コムイさん…。
何か今、すごく胸にこみ上げてくるものがあるよ。
ジーンと感動に浸っていたら、司令室に間の抜けた音が響いた。
私の胃が食べ物を欲しているらしい。
「ご、ごめんなさいミュア! そういえばまだ朝食取ってなかったわよね?」
「うん。食堂行ってくるね」
ごまかし笑いで切り抜けた私は、パルチザンをしまったギターケースを背負い食堂に向かった。
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