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黒の教団内・地下水路にて。
隣でバサッとコートを羽織るアレンを見つめ、『アレン可愛いアレン可愛い』と内心で真顔のまま連呼する。
「ちょっと大きいね」
「これ、着なきゃいけないんですか?」
「エクソシストの証みたいなものでね。戦闘用に作ってあるからかなり丈夫だよ。あと左手の防具はボク的に改良してみました」
「アレン、似合ってるよ!」
ニコッと笑顔を向けて言えば、アレンはちょっと視線を下に移して、
「あ、ありがとうございます。ミュアも似合ってますよ」
と女子的には嬉しい返答をくれた。
頬を緩ませて、エヘヘと照れ笑いをする。
もぞもぞ…。ピョコ!
直後、左手の袖口から、ティムキャンピーとドルチェが飛び出て来た。
「ティムキャンピー! それにドルチェも! どこ行ってたんだお前たち」
ごめんドルチェ。アンタの事すっかり忘れてたわ。ちらりとも掠らなかった。
謝罪の念を込めて頭を撫でると、パタパタと嬉しそうに銀翼を羽ばたかせた。
「……お前ら、『デュエット』組んでるんだってな」
「!」
信じがたい事に、あの神田が私に声を掛けてきた。
一応、頷いておく。
「チッ。ならお前ら2人で行けばいいじゃねェかよ」
滲み出るイラつきを隠しもしない神田。
何が言いたいんだこの人。
アレンがムッとしたところで、コムイさんが神田を宥める。
「分かってないなぁ、神田くんは。アレンくんもミュアちゃんも新人だよ~? いきなり戦場に送り出すのは忍びないじゃないか。そこで先輩であるキミの出番というワケさ」
少々おちゃらけて振る舞うコムイさんに上手く丸め込まれた神田。
そのまま無言になる彼。
ボートに乗り込むと、笑顔と共にコムイさんが親指を立ててサムズアップ。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
「行ってきます…っ!」
漕ぎ出したボートの上から、私だけ若干声を裏返させつつ、挨拶を交わし合った。
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