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ガタコン、ガタコン…。
規則正しく揺れる汽車の一室で、ようやく落ち着けた私は、資料のファイルを開く。
──古代都市マテール。
今はもう無人化したこの町に亡霊が棲んでいる──。
ファイルの出だしがそんなんだったため、さぁーっと私の顔は青ざめた。
「亡…霊?」
うわあ、一気に任務やる気無くした。
私からブルーなオーラが出ているのを感知したらしいマイパートナーがすかさず声を掛けてくる。
「ミュアって幽霊とか苦手なんですね」
「うん……の割に見たことないけど」
神田からしてみれば、ずいぶん気の抜ける会話である。
「あ、そうだ。神田、さっきの質問なんですけど」
24時間常に仏頂面のパッツン男児・神田の目がアレンへ向けられる。
「何でこの奇怪伝説とイノセンスが関係あるんですか?」
問われた神田の顔には、「めんどくせ…」と書かれている。
「チッ。イノセンスってのはだな…」
舌打ちしつつ、神田は説明を始めた。
なんだかんだ、この人良い人なのかも。なんて思ったり。
神田曰わく、ノアの大洪水から現代に至るまでに様々な状態に変化している場合が多いんだとか。
「その結晶の不思議な力が導くのか、人間に発見され、色々な姿形になって存在していることがある。そしてそれは必ず奇怪現象を起こすんだよ。なぜだかな」
「じゃあこの『マテールの亡霊』はイノセンスが原因かもしれないってこと?」
神田の説明の後、アレンが重ねて疑問を上げると、
「ああ。“奇怪のある場所にイノセンスがある”だから教団はそういう場所を虱潰しに調べて可能性が高いと判断したら俺達を回すんだ」
「なるほど…」
すっかり神田の説明に聞き入ってしまった私は、理解を示す。
視線をファイルに戻し、ページを読み進めていくと……。
「──!」
「!」
「これは…」
どうやら、3人揃って同じページで言葉を失ったらしい。
「そうでございます」
計ったように、トマが部屋の外から言葉を発した。
「トマも今回の調査の一員でしたのでこの目で見ております。マテールの亡霊の正体は…」
扉一枚挟んで、トマは──
「人形でございます」
──亡霊の正体を明かした。
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