30人が本棚に入れています
本棚に追加
「……」
突然、飛んでいったイノセンスを追いかけた先にいたのは、1人の少女。
そばにはすでに破壊されたアクマの残骸と紫色の大剣。
「適合者じゃねぇか。装備型だな…イノセンスの力の影響を受けたか」
武器が形成されても、未だ強すぎるイノセンスの力に影響を受けているらしい少女は気を失って倒れ伏していた。
「…ちょっと拝借させてもらうぞ」
少女が持っていた学校の鞄をあさり、生徒手帳を取り出して身元を確認する。
「ミュア・アヴァンシア……高等科1年?」
赤色のロン毛に妙な仮面を半分付けた青年──クロス・マリアンは「マジか…」と呟く。
「背小せぇし、もっと年下だと思ったぜ……とりあえず、運ぶか」
言うより早くお姫様抱っこをした直後、銀色のゴーレムがぴと、と少女の頭に乗った。
そして、スリスリ……と頬ずりをする。
「どうした、ドルチェ? コイツに何か感じるのか?」
ティムキャンピーと同種のドルチェが見ず知らずの人間に懐くなんて、珍しい。
適合者ということ以外にこの少女には何かあると考えたクロスは、この少女を短期間、弟子にすることにした。
☆
「はぁはぁ……」
息も切れ切れのまま、何かに追い立てられるように、暗闇を走る。
どこだ、ここ。
なんで私こんなに必死になって全力疾走してんの?
──一体、何から逃げているの?
そう思った瞬間に、後ろから昨日の不気味な化け物が空中を浮遊して追いかけてきた。
「──あっ!」
背後を気にしすぎたせいか、ドサッと躓(つまず)く。
その時、球体の化け物は別の…ずんぐりむっくりした大柄の人物に変化した。
尖った長い耳に黒く、長いシルクハットを被っていた。
「イヤ……来ないで……」
私を捕らえようと伸ばしてきた手が迫る。
「いやぁぁぁ!!!」
──ハッ。
目を覚ますと、暗闇から一変して、室内に白い光が差し込んでいた。
使い込まれた机や椅子。
様々な教科書や辞書が並べられた本棚。
薔薇をモチーフに作られた、お気に入りのドレッサー。
私の自室だった。
最初のコメントを投稿しよう!