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……あれ?
さっきのは…夢?
「なんだ…夢か」
ベッドから上半身を起こしながら独り言を発する。
じゃああの学校帰りに襲われたヤツも全部夢だった…とか?
なら、いいけど。
制服に着替えて、腰まで伸びている色素の薄いピンク色がかったロングの髪をツーサイドアップに結び、身なりを整える。
最後にリボンタイを胸元に結び、準備完了だ。
「…よし!」
シャキッと気合いを入れて、部屋を出た。
うちは小さいながらも、宿を営んでいる。
「お母さん、お父さん。おはよ、う……?」
階段を降りて、いつも通りに両親に挨拶をしかけた私の視線はある一点に釘付けにされた。
大剣。
そう、昨日──私が化け物を一刀両断した時に握った剣が、壁に立てかけられていたのだ。
「な、なんで……」
動揺していると、背後から男性の低い声が掛けられた。
「その剣が、お前のイノセンスだからだ」
振り向くと、赤色の長い髪を背中に垂らした男性が銀色の…何かを連れてそこにいた。
「イノセンス……?」
「アクマを破壊できる唯一の物質であり、対アクマ武器だ。イノセンスを扱えるのは、選ばれた適合者のみ」
そして、続けて言い放った。
「その剣を振るったお前もまた、神に取り憑かれた使徒のようだ。──エクソシストにならないか?」
☆
それから、超短期間だけその人から修行を受けて、エクソシストの見習いとして実戦経験を重ねることとなった。
その間、うちの宿に泊まっていたクロスさんから、驚くべき事を突然告げられる。
「ミュア、オレは今夜この街を発つ」
「はぁ。…って、えぇ!?」
驚きのあまり、持ってきたコーヒーを危うく床にブチまけるところだった。
「クロスさん、まだ2日しか滞在してませんよね?」
「もうお前に教える事は何もないな」
「嘘つけぇ! 私何ひとつ教えられてないんだけど!?」
「習うより慣れろって言うだろ」
コイツ…鬼だ!
「オレは忙しいんだよ。これやるから近日中にエクソシストの本部に行け」
ポチョ、と押しつけられたのは白銀のゴーレム。
ピンポン玉に鳥の羽根と尻尾が生えたようなデザインだ。
「なんスかこれ…」
「お前のゴーレムだ。名前はドルチェ。それが本部の場所を知ってる。道案内をしてもらえ」
「クロスさんは行かないんですか?」
煙草を取り出しながら、クロスさんは一言。
「オレあそこ嫌いなんだよ」
「……はあ」
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