30人が本棚に入れています
本棚に追加
「何よ…これ…!」
情けない。
でも、私にはエクソシストになるという覚悟が足りなかった事を痛感した。
伯爵はそんな私を見下ろして、ニヤニヤと口許を歪(ゆが)めさせる。
私の対アクマ武器は、大剣だ。
間合いに入らなければ、敵を斬ることはできない。
上空に浮かぶあのアクマたちに、私の剣は届かないのだろう──。
でも、でも……。
地面に視線を落とした私は、無意識に言葉を紡いでいた。
「……るもんか」
「ん? なんデスカ? 聞こえマセンネ」
「このくらいで……諦めるもんか──!!」
キレ気味に叫んだ私は地面に下ろしていた切っ先を何も考えずに、天を突くように振り上げた。
その、一瞬の動作によって。
私の対アクマ武器の真価を思い知らされる事になる。
剣が伸びて、ぐにゃりと曲がったかと思えば──伸びた大剣が鞭状に変化し、空中に浮かぶアクマたち数体を切り裂いた。
「そうか……! 私の対アクマ武器は、蛇腹剣(じゃばらけん)だったんだ」
近づけば大剣で真っ二つ。
遠ざかれば蛇腹の餌食。
遠近どちらにも応用が利く、便利な対アクマ武器だ。
「むぅ…小癪(こしゃく)ナ」
「そうと決まれば…攻め続けるのみ!」
新体操のリボンのように、優雅に蛇腹剣を扱い、次から次へとアクマを救済していく。
よし、このままいけば…!
一瞬の油断だった。
その一瞬が、命取りになった。
背後に潜んでいた、もう1体のアクマに気付かずに、至近距離から弾丸が撃ち出された。
私、目掛けて。
アクマが撃ち出す弾丸は、毒のウイルスが含まれている。
寄生型ならともかく、生身の人間に撃ち込まれれば死ぬ。
「──ッ!」
とっさに蛇腹剣を振るって、迫り来る弾丸を真っ二つに切断したが、衝撃までは打ち消せなかったようだ。
吹っ飛ばされて、街の壁に身体を強かに打ちつける。
「……う……ッ」
呼吸をするのも苦しい…。
肋骨折ったかも。全身が痛いし。
仰向けで地面に転がる私を、向こうの屋根の上から、伯爵は月をバックに見下ろしていた。
ジャキジャキ!
多数のアクマが、私の周りを囲んで砲口の照準を私に合わせる。
ここまで…か?
「やっちゃいなサイ! アクマたち!」
最初のコメントを投稿しよう!