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零れる涙と嗚咽を抑える事に精一杯で
返事すら出来ない貴子に兄嫁は優しく続ける。
「ねえ、貴子ちゃん。
ここは貴女の家なのよ。
ここには貴女の家族がいる。
たとえ、苗字が変わろうと、時が過ぎようと
それは生涯変わらない。
だから、変な遠慮しなくていいの。
待っているから、いつでも、帰っておいで・・・」
蹲り、決壊した涙を子どものように
手で拭いながら、貴子は何度も頷いた。
兄嫁は貴子が落ち着くまでただずっと静かに
電話口に居てくれた。
それだけで、身をがんじがらめにしていた
心細さの鎖が解けていく気がした。
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