chapter1

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 ガタン、ゴトン……っと一定のリズムを刻みながら電車が走る。  車輪とレールの噛み合う音が喧しく響くとは正反対に、中に居るのは青い制服を着込んだ若い男女が一人ずつ。  真っ赤な髪の快活そうな青年と、腰元までもある黒い髪をした清楚な少女。  二人は向かい合う形で座っており、快活そうな青年は詰まらさそうな顔をしながら肘掛けに頬杖をついて凭れ、少女の方はニコニコとした笑顔で男の方を見ていた。 「楽しみですねぇ」 「あ?」  不意に、少女が喋る。独り言には聞こえない声量であった為、ちらりと少女の方へ顔を向ける青年。 「なにがだよ」 「今からの事です」 「……遊びに行く訳じゃないんだぞ?」 「それぐらい分かってますよぉ~」  分かってねぇだろ……青年はそう言いたげな表情で溜め息を一つ吐くと、また車窓へと顔を向けた。  車窓の外へ拡がる世界はとても綺麗で、同時にこの世界とは思えない様な光景であり、外を見ている青年は飽きる様子が見当たらない。 『次はぁ~、ムサシノ。ムサシノです。ご降車のお客様は、お足元と上に荷物をお忘れなきようお願いいたします』  電車から駅に到着するアナウンスが流れる。それを聞いた二人は、互いにそれぞれの荷物を持って席から立ち上がった。
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