971人が本棚に入れています
本棚に追加
今までは一歩進んだかと思えば後退するのが常だったけれど…これからはもう後には引かない。
前進あるのみ、だ。
そのためなら多少セコイ手だって使ってやる。
俺は意を決して口を開いた。
「…早瀬さん」
「…なんだ」
「今日はハロウィンですね」
「は?何を今更…」
「早瀬さん、ハロウィンはご存知だったんですね。だったら、ルールも知ってますよね…?」
「はぁ?馬鹿にするな。ハロウィンはむしろアメリカが本場だろう。…何でもいいが、いい加減この手を離」
「トリックオアトリート!!」
俺はその最終奥義を高らかに叫んだ。
早瀬さんには悪いが…ここからは俺のターンだ。
「…は?」
「お菓子をください。なければ…俺の言うことを聞いてください」
にじり、と早瀬さんに詰め寄る。
…"恋人"も誕生日ももはや関係ないが、彼にここにとどまってもらうにはこれしかもう手がない(必死)
早瀬さんはあくまでユニク◯モデル並みの軽装!
手持ちの荷物の中にお菓子が入っている可能性は限りなくゼロに近い!
となれば選択肢は一つ…トリートではなく、トリック!
変なとこ真面目な彼は、この突如始まったわけのわからない博打に乗らざるをえないだろう。
全て計画通り…!(大嘘)
さぁ、俺の言うことを聞いていただきますよ、早瀬さん!
最初のコメントを投稿しよう!