1.幸福は気から

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唐突ですが、俺こと相良祐介(サガラユウスケ)は幸せです。超幸せ者です。 大きく分けてその理由は二つ。 まず一つ目。幸せポイント第一。 俺は就活がとんとんと上手くいき、それなりに名の知れた会社で働いております。新卒で入って2年目。ビッチピチの24歳。 「ーおい相良!今日までにこの書類片付けとけよ!」 「ハイ!」 「相良くーん、月曜日までにプレゼンの準備お願いね~」 「は、ハイ…!」 「なあ相良。コーヒー買ってきてくんない?」 「…ハイ」 こんな感じで、社内での評判も絶好調です。先輩方も超優しいっすウス。 「…くっそ…書類全然かたづかねぇ!」 週末の残業とか、もうホントへっちゃら。チャラヘッチャラ熱唱しながらでもできちゃうって。だってオフィス俺の他に誰もいねぇし。 幸せポイント第二。 俺にはかーわいい彼女がいます。名前はさとみ。ホラ、名前だけで美人ってわかるだろう?デートも週一間隔で。明日もデート。そりゃもうラブラブです。こないだだって… 「ゆうちゃーん」 「どした?」 「私ね?アレ、欲しいなーって」 彼女が指差したのはバッグだ。 「…前も買わなかった?」 「やだーゆうちゃん。前のとは全然色もデザインも違うでしょ?」 だから、ね?と笑うさとみは超絶可愛い。カバンの違いなんざ微塵もわからないが、それだけで頷いちまいそう。だがしかし。 「…2万?」 目を凝らして値段を見る。 「やだーゆうちゃーん。ゼロ1個足りないよ?」 …もう一度言うが、はにかむさとみは超絶可愛いんだ。だから、ゼロが一個多いとか少ないとか、そんなことは、たいした問題では、ない、のだ。最近なんだか俺にやたら生命保険を勧めてくるが、そんなことも問題ないのだ。うん。…うん。 書類と格闘していたらブルル…と携帯が震えた。愛しの彼女からのメールだ。急いで開く。 『ゆうちゃんごめーん>_< 明日行けなくなっちゃったのー( ; ; ) だからケーキバイキングはまた今度おごってネ(笑)』 「………」 ええ、俺は幸せです。 「…あ、終電逃した」 幸せですとも。
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