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「で、コイビトってなんだ?何するんだ?」
きょとんと首を傾げて言う早瀬さんに、俺は吉本芸人並のズッコケを披露してみせた。
…いともたやすく行われるえげつない行為!
甘い空気も点描トーンも一瞬で吹き飛ぶ。いや、初めからただの幻術だったのか。
わかってた、わかってたとも。
こういうオチだってわかってた。
だが、ダメージはでかい。
地面にこんな感じorzでへばりついた俺を、早瀬さんが訝しげに見下ろしている。
「おい何やってるんだ」
「…感傷に浸ってるんです。そっとしといてください」
「何故感傷に浸ることがある。むしろ喜べ。小躍りしてみせろ」
「できるか!」
なお床と見つめ合う俺に、早瀬さんはため息をついた。と思ったら、すぐそばに腰を下ろす気配がした。
「…俺が何か間違ったなら、悪かった。正直そういうのはよくわからないし、コイビトとかも初めてだ。だが、…」
不自然に言葉が途切れる。妙に思い、顔を上げる。と、膝を抱えて座る早瀬さんが隣にいた。
「初めての相手がお前で、…嬉しく思う」
「……」
「いろいろ、教えてくれるんだろう?」
そう言って僅かにはにかむ早瀬さんを、思わず凝視してしまう。その綺麗な顔を見つめているうちに、俺の顔もゆるんでくる。
ーああ、やっぱり俺はこの人のことが好きだ。大好きだ。
「はい…!」
そう思って笑い返す。きっと俺の顔は今、馬鹿みたいに満面の笑みを浮かべてることだろう。
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