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「ちょっと、ちょっと待ってください!」
「…なんだ、俺は帰る」
スタスタとリビングに戻って自分の荷物をまとめ出した早瀬さんを、急いで引き止める。
「もう帰っちゃうんですか!?」
「……邪魔したな」
ふいっとまだ少し赤い顔を背けて玄関に向かおうとする早瀬さん。盛大な照れ隠しだ。
俺はそれを阻止すべく、
「いや、待ってくださいってば!」
どん、
と、彼を壁に縫いとめるように手をついた。いわゆる"壁ドン"である。何気に俺がこの技を繰り出すのはこれで二度目であり、2回とも相手はこの人だ。
「…何なんだ」
「何、っていうか、その…」
せっかく来てくれたのに、もう帰ってしまうなんて、…寂しいではないか。
「離せ、俺は帰る」
「そ、そんなに照れなくても」
「なっ照れてない!誰が照れるか!離せ!気持ち悪い!」
「だからひでぇ!」
き、気持ち悪い(本日二度目)…いや、これも照れ隠しだ。負けるな、相良祐介。
だって今日は…
「…俺、誕生日、なんですけど……」
そうなのだ。
いくつになっても誕生日は誕生日。
ちょっとしたワガママは許される、だろう…?
俺がそんな思いで呟けば、早瀬さんはぐっと言葉に詰まった。
そしてバツが悪そうに視線をそらす。
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