価値観と価格

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「ちょっと、また雑誌の端を折ったでしょ?」 「いいだろう?別に。よく使うところを確認しなきゃ。」 「でも本棚でかさばっちゃうでしょ?」 そういいながら彼女は旅行雑誌を本棚に戻していく。細いしなやか指はいつ見ても綺麗だな。それからストレートの髪は短いけど艶やめかしい。また俺は視線を彼女の戻した本棚の隣の雑誌を見る。 《…今年のトレンド…流行るブランド集。》 「…ねぇ、仕事は順調?」 「!?…ああ。まぁまぁだよ。」 俺の驚く様子を見て彼女は微笑んで隣に座ってくる。 「またよそ事考えていたでしょ?」 「そうか?」 彼女は俺の肩に頭を乗せてくる。これは彼女なりの甘えの合図だ。俺は彼女の腰に手を回して、体を寄せて頭を撫でてあげる。 「やだ~。恥ずかしい!」 そう言って照れて顔を俺の胸に隠す彼女。俺はいつもはそんな彼女を全身で感じるのだが、今の俺は頭が違うところにある。俺は彼女を抱えながら視線はさっきの雑誌を見ている。
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